1984年11月くらいから、翌1985年2月、そこから先3月から最終的にお別れになる5月あたりの記憶は、記憶がなかったり断片的だったり、ことの前後がはっきりしなかったりする。
はっきりしているのは、何回か、といっても、実は数回しか中出ししていないと思う。やっぱり妊娠が怖かったし、妊娠してつらい思いをするのは美樹だし、欲望のおもむくままにコンドームもしないでペニスを挿入していたわけではない、と思うがどうだったかなぁ。多分記憶は自分に都合のよいように修正されている。ただ、欲望のおもむくままにペニスを挿入していたのは確か。美樹が体調不良だったり、たとえば「今日はしたくないなぁ」という日があってそう言われたとしても、お構いなしに突っ込んでいた。今思っても思いやりがなく、かわいそうだったなぁと思う。
あの「ね、中に出して」「う、うれしィー!」の直後のセックスでは、確実に1回は中に出している。そのあとは、あまり記憶にない。毎回ではなかったはずだが・・・・いや、怪しい。だって美樹は毎回中に出してほしいと言っていたはず。 いずれにしても、この頃は会うたびに、いや、美樹の部屋を訪ねるたびにセックスするのが当たり前で、こちらはそのつもりだし、向こうも当然だと思っていたと思う。あとはタイミングと雰囲気だけだ。いくらなんでも毎回ではないだろう。危険日に当たっていた日もあったはず。
この頃は、お互いに先の展望もなく、ただ会っては雑談をして流れでセックスしていたのだろう。 セックスは気持ちいいけど、このままこの調子で生きていけないとは思っていた。美樹はかわいいけどこんなふうに会ってセックスする生活を続けていけるのか?美樹も、出会ってからずっとアルバイトもしないで親の仕送りだかなんだかのお金で暮らしているみたいだけど、本人が働かなくていいのか?生活保護をもらう・・・俺のアタマでは理解できなかった。働こうと思えば働けると思うのに、なんで生活保護?
その日もいつものようにセックスしようとしたら、なんかとまどっている。すんなりセックスさせてくれない。なんだろうと思った。
どうやら、生理が遅れているらしい。それも2週間近く。考えたら、それまでは美樹の生理が順調なのか不順なのかなんてこともあまり気に留めたことがなかった。ただ、生理になるとセックスできない、生理が終わった直後は中出ししても妊娠しない、くらいしか考えていなかったような気がする。 そんな心配をして気が重い美樹を相手に、いつものような性欲丸出しのセックスをする。終わったら終電間近い山手線で帰る。 そしてどうやら妊娠したらしいということになる。この時も、「妊娠していると思う」という話しのあとセックスをしてこの時にも中出ししている。ひどい話しである。 セックスのあと「ねぇなんで中出しするの・・・(怒)」というような反応があったので「だって妊娠しているのなら中出しできるじゃん」とか「妊娠しているのならもう関係ないから中出ししても大丈夫」といって「あぁそうか、そうよね」と言わせた記憶がある。改めて考えてもひどい話しである。
そんな、妊娠したと思う、のあと、数日後、セックスした後に泊まり、起きたら「一緒に病院に来てほしい」と言われる。・・・このとき、朝食はどうしたのだろう。お茶だけ?
「ん、病院?」「うん」多分ビビリながら産婦人科か否か、聞いたのではないか?状況的に考えられるのはそれしかない。
「産婦人科?」「ううん違う」「(ほっ)(何科なのかも聞かずに)うん、いいよ。」(そうか俺も美樹と一緒にどこかに行くときに便りにされるようになったか)
そして二人歩いて近所の代々木病院に行く。 代々木病院というのは、共産党系の病院で、宮本顕治が入院していたこともあるとか。 そんな代々木病院の奥の方の「精神科」の待合室で座る。代々木病院に行くのも、精神科に行くのも初めてで俺は戸惑っていた。 え、美樹が精神科?どこか悪いの?俺にはそうは見えないけど・・・・・・ 初めてなので周囲を観察するが、皆静かに順番を待っている。
しばらくして美樹が呼ばれる。俺もついて入る。医師はまだ若い。 どんな話しをされたのか、あまり覚えていない。覚えているのは、「妊娠の可能性があるのなら、クスリは出せない」「この人の言うことを聞いて上げて。何言われても「うん」って言ってあげて」ということだったか。
美樹が精神科にかかっているとはしらなかった。なぜかは聞かなかった。俺のせいかもしれない。 (2025/2/20)続く。
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