ボタンダウンシャツの下は、俺と同じヘインズのTシャツを着ている。 再び「バンザイ」というと美樹は両腕をあげる。するっとTシャツは脱げ、下着姿になる。やっぱり恥ずかしいのか、胸を隠したり、横を向いたりすることもあった。でも背中のホックを外すのは協力的なのだ。 ふわっ、とブラジャーを滑らすと、1982年10月2日に新宿の「銀水」という連れ込み宿で同じように下着を外して胸が露わになったときに「結構あるでしょ」と言ったのと同じ、いやその時よりも形がよくなったような乳房があらわれてくる。 柔らかく、乳輪がぷっくりと腫れたように隆起していて、はっきりと自己主張する乳首があらわれる。 ベッドにいざない、横にして、下半身を脱がせにかかる。スカートならホックを、ジーンズならボタンをはずして脱がせる。 ストッキングを脱がせて、パンツを脱がせる。 お尻を浮かせるのがかわいい。 全裸の美樹は、見慣れているようで見慣れない。 興奮しつつ、自分も脱ぐ。美樹だけを裸にしないように、自分が先に裸にならないように工夫しながら、いつしか自分もパンツ一丁になっている。
夜だと、美樹は「電気消して」とせがむんだけど、俺はいつも消さなかった。美樹の顔を見たかった。あえぎ、眉間にしわを寄せ、顔を左右にふり、髪を振り乱してその中にあえぐ美樹の顔を見ていたかった。 でも、美樹は顔を見られたくなかったらしい。
舌を絡ませたキスから、乳首を舐め、口に含んで舌でころがし、右手の中指は美樹のワギナを目指す。濡れている。中指を挿入する。膣の奥の方をまさぐる。美樹の喘ぎ声が聞こえる。 美樹の脇の下を舐める。少し剃りあとがある。剃らなくてもいいのに。
この千駄ヶ谷のアパートでの間、美樹はセックスに目覚めたところがある。それまでも何回もしていた。 しかし、羽根木のアパートでは、まだあまり経験はなく、ほかにも浮気相手が少なくとも二人はいて、それぞれとセックスしていたはずだが、自分から求めるようなことは記憶にない。 遠慮していたのかもしれないな。
五反田では、会ったらセックスできるとは限らなかったし、別れている期間もあったし、セックスするのもホテルやレンタルームだった。 千駄ヶ谷は自分の一人暮らしの部屋ということもあって、リラックスもでき、いくらでもでき、また大人にもなってきたのだろうと思う。とはいっても、今思えばこちらも童貞を卒業したのが美樹で、経験不足もいいところ、数をこなしている内に段々と美樹がセックスの快感に目覚めてきたということなのかもしれない。
この千駄ヶ谷の間に、美樹がセックスに目覚めてきたと思えるのは、いくつかある。
ある日、精液を飲みたいと言ってきた。 その日もいつものように昼間にセックスを始めた。話している内にどちらからともなく相手ににじり寄り、手を触り、唇を吸い、無言で服を脱がしていく。ベッドに上げて全裸にしてクリトリスを舐めて脚を拡げさせ、挿入する。この日も避妊具を使っていなかった。そして挿入してすぐに「ねぇ・・・飲んでみたい・・・」と言う。一瞬わからない。いや、わかったようでわからない。この態勢、この状況で飲んでみたいといわれたら精液しかないじゃないか。
「えっ・・・いいの?」
ついこの間まで童貞で女性経験は美樹一人の俺は戸惑う。一方美樹は、本人の口から聞いたことはないが、中学3年生のときに同級生の産婦人科医の息子と交際していたので、初体験は中学生で済ませているはず。そして俺が大学1年の夏休みに道を通り掛かった浪人生とつきあい、秋には予備校の同級生だった、男なのに美樹と書いてはるきと読む清水美樹とも二股かけて、何回も聖蹟桜ケ丘の清水の部屋でセックスしていたはず。美樹の方がずっと経験豊富で男を手玉にとっている。
「うん」
いつもの、自分勝手な性交とは違う。このあと、美樹の口内に射精しなければならないのだ。 普段のセックスは、セックスと言うよりも、美樹のワギナを利用したオナニーみたいなものだ。 妙な緊張感でタイミングを見はからう。出そうなんだけど出ない。出すときには美樹の口に出さなければならない。 やっといきそうになる。「出るよ」「・・うん」「・・・・・あっ、あっ、・・・出るっ・・・」 さっとワギナからペニスを抜き、その動きに美樹が声を出す。射精を我慢しながら必死に美樹の口にペニスを持っていく。美樹がぱくっとくわえる。 美樹は目をつむり、爆発したように出る精液を必死に受け止める。 二回、三回と発射される精液を必死に受け止める。 放出が済んだところで、腰を動かして美樹から離れる。 美樹は口をつぐんだまま、上半身を起こして、口の中の液体を味わっているようだ。 上を向いて「うーうーうー」とうなったかと思うと、ごっくん、とのんで、「あー、はー」と大きく口を開けて深呼吸する。 精液を飲んだことを俺に見せつけるかのようだ。
「はぁ、はぁ、ダッ、て出るんだもん、苦しかったぁ」
いつものように電話で呼ばれて、美樹の部屋に行く。 きちんと服を着て、多分化粧もしているだろう。俺はまだコドモだったから、同い年の女の子が化粧してオンナになるのについていけなかった。
その前まで何を話していたのか覚えていない。 「ねぇ」 「うん」 「したいの。したくてしょうがないの」 「え?したいの?」 「うん」 「そんなに?」 「そんなに。」
いつものように幼くみえてかわいい、背は158センチくらいあるけど幼い顔で、まだ体つきも少女のようで、裸にしてもウエストはくびれておらず、お尻はちいさいままの幼児体型のような美樹の口から「(セックス)したくてしょうがないの」というそのギャップにどぎまぎする。 1984年の秋、美樹19歳。 童貞同様の俺に、テクニックなどあるわけがない。下手ながらも毎週かならず交わっていたために、段々と開発されてきたのだろうか。
また別の日。たしかこの日は夜。この日もいつものように、二人で部屋にいるうちにどちらからともなくくっつき、裸になり、性交しようとしていた。 いままさに挿入しようとするとき、美樹が言う。 「ね、中に出して」
ほぼ童貞のあさましさ、避妊具をあまり使っていなかった。ヒトツは買うのが恥ずかしい、二つはゴムがない方が気持ちいい、三つは膣外射精すれば妊娠しない。まともな女性にしてみればたまったもんじゃないだろう。しかし美樹は・・・
1982年10月2日に二人が初めてセックスした翌日、コンドームをつけて交わったのに、美樹はまるで中に出されたかのような話しをしてきた。 中学生のとき、同級生の西山亨とはコンドームを使っていなかったのかもしれない。生理が始まったのが遅くて中学3年だと言っていた記憶がある。
セックスに貪欲になってきたのか、快感を覚えるようになってきたのか。この頃に「イク」というのを経験したのかもしれない。 自分の射精最優先だったから、やさしいセックスなんてしていなかった。だけど、きっと数をこなしているうちに快感を覚えてきたのだろう。
この頃は、避妊具を美樹のベッドに置いていた。本人は嫌がっていたが、俺は「使っていいよ」と言っていた。 美樹とは何回も別れ話が出てはそのたびにセックスして立ち消えになり、俺とのつきあいはセックスだけにしようかと話したり、また別の男とつきあうことの是非を話したりしていた。そう、俺としては、美樹が自由に振る舞いたいのならいいと思ったし、俺の目に触れなくてまったくわからなければほかの男とセックスしてもいいとさえ思うことがあった。
初めてセックスした17歳のころから比べると、たしかに美樹は快感を口にするようになった。セックスのときも我慢するのではなく、たとえば挿入の際には脚をみずから大きく開き、局部が丸見えになっても構わなくなっていた。キスをして服を脱がせ、下着に手を入れて指を入れるともう愛液がたっぷりとあふれていて指が3本入るほどだった。そして指を出し入れするたびに喘ぎつづけるのだった。
「中に出して」と言われて、俺は躊躇する。千駄ヶ谷のアパートに来てからは、中に出したことがない。いや、羽根木だから一年以上は出していない。中に出したのは羽根木のときに2、3回ある。
羽根木のアパートに初めて行ったときにはベッドがなく、敷きっぱなしの万年布団の上でまぐわったとき、避妊具を持ち歩いていない俺は中に放出した。美樹がトイレに行こうとたち上がって歩きだしたら振り返り、「ねぇねぇ見て見て」と右の太股の上を伝う精液を見せてくれた。この時の全裸の美樹と太股に垂れる精液は何故か良くおぼえている。 その後、アパートに入り浸っているときにも避妊具なしで射精して、「生理が遅れた、妊娠した」ということがあった。 この時美樹はすっかり産む気で、近くの本屋で子供の名付けの本を買ってきた。今思えば、この時から少し美樹はほかの同い年の女の子とは違うところがあった。でも、当時は気がつかなかった。何しろ初めての彼女だったから。
「え、いいの?」「うん」「大丈夫?」「うん」「本当に」「ね、出してほしい」 もう1年半以上肌を合わせている身体である。なじんでいる。大好きな身体。童貞だった俺も、段々慣れてきたように思えていた。
中に出してほしい、と言われて、ちょっと緊張したのだろうか興奮したのだろうか。いつもと同じプロトコルで進めたようでありながら、「フィニッシュは違うんだ・・・」とでも思っていたのか。 美樹の中でペニスを動かす。気持ちいい。射精しそうになる。出したくなる。いつもならそのまま射精したいのを我慢して、鼠蹊部がツーンと引きつるようになるのを感じつつ、出てしまうのをこらえて美樹のワギナから抜き出して下腹部に射精するところ、今日はそんなことをしなくてもいいのだ。快感に導かれるまま、出したいと思うそのままに、射精する。
「美樹、出る、出るよ」「うん・・・ね、出して、出してぇ」「あ、あ、あ、出る、出る出る」美樹の奥の方に放出する。 びゅっ・・・・・・・・ズッ・・ドク、ドク・・・・・・ドクッ・・・・・
美樹が大きな声を出す。「うれしぃー!」セックスの快感ではない、ココロが満たされたからのような声が耳元で響く。
ふたりとも動かない。二人とも、中に出した快感と満たされた感じに浸っている。 美樹のかかとが俺の太股を押して、ペニスを奥に押し込もうとする。美樹の両手がそれを助ける。 「ね、抜かないで・・・」溜まった精液を放出したあとのペニスが、精液がこぼれないようにする栓になっている。美樹のあたたかさをペニスが感じる。 もういいかな。「ね、抜くよ」「・・・うん」そーっと抜く。これも共同作業だ。でも抜くときも気持ちいい。重しのとれた美樹は、腰を宙に浮かす。え、どうしたの?そうか、精液をこぼしたくないのか。エッチだな。
このあと、美樹はトイレにいったはずだが、あまり記憶がない。俺が拭いてあげたのだろうか。それとも美樹が自分で拭いたのだろうか。 羽根木のときのように、太股に垂れる精液を見せてくれるようなことはなかったけど、二人とも気持ちよかったはずだ。
もう一つ、美樹がセックスに貪欲になってきたと思えることに、自ら後背位を望んだことがある。 ついこの間まで童貞で、性欲の赴くままに美樹の身体をむさぼってきた、または美樹のカラダをおもちゃにしてきたので、ただ一目散に求めることしかできていなかった。なので、美樹を仰向けにして裸が一番よく見える正常位で突撃するごとく挿入するのがいつものことだった。
なので、その日も正常位で、部屋の電気を煌々とつけたままでしていた。千駄ヶ谷に引っ越す前から、いや、羽根木でセックスしていたときから、ラブホテルに入った時も、電気はつけたままだった。いつも美樹は「電気消して」という。俺は消さなかった。美樹の裸や、喘ぐかわいらしい顔が見たかった。美樹はいやだったんだろうと思う。
その日のセックスも、美樹の顔を見ていた。かわいい、本当にかわいい顔が苦痛に歪む。快感が顔に表れる。体を起こすと、ピストンに沿って大きな乳房が揺れる。こんなに揺れているのに本人はなんとも思わないのだろうか?このカラダ、売り物になるなぁ、なんて思ったり。
その美樹の口から、小さく、「ね、後ろからして」。 この時まで、俺が後背位で挿入したことは一度しかなかったはず。大学受験が終わってすぐのデートで歌舞伎町のラブホテルに行ったときだ。風呂から上がって遊んでいるとき、戯れに後背位で挿入した。俺はあまり気持ちよいと思わなかったのですぐに抜き、正常位に変えたが、たしかに美樹の顔が「あれっ」とか「あらっ」と言っていた。多分この時に、後ろから入れられると感じると思ったのだろう。
ペニスを抜くと、美樹は四つんばいになる。蛍光灯が煌々とついている。ほの白いカラダに水着のあとが残っている。お尻に向かってペニスを突き刺す。するっと入る。美樹は下つきなんだ。ゆっくりと動かす。あえぐ。大きく動かす。あえぐ声が大きくなる。「いくっ」と美樹が叫ぶ。すぐにイッてしまった。本当に感じるらしい。やめない。また動かす。首を左右に激しく振る。下を向いて動かなくなる。つっぱっていた腕は力なく布団につき、頭が布団についてからだを支えている。「あー、内臓がかきまわされるー」とあえいでいる。
ところが俺はあまり気持ちよくない。正常位のときのようにペニスが包まれる感じがない。膣を激しくこすっているのはわかるが、快感がない。 なぜか美樹は、俺がきもちよくないのがわかるらしい。何回か突いたあと、正常位に戻して、俺をイカせてくれた。
この日以降のセックスは、正常位で始めて後背位で突いて美樹をイカせ、正常位でイカせてもらうのが定番になった。 後背位が一番感じる、なんて、こんなかわいくて華奢な女の子にはとても不似合いで、それがまた俺のものにしておきたい気分に輪をかける。
「何が一番感じるの?」「・・・バック・・・バックが一番感じる・・・」 後背位でするようになった初めのころは、頭は下を向いてただ突かれる快感に耐えているようだった。そのうち、バックで突かれながらも顔を俺に向け、口づけをせがむようになってきた。カラダの柔らかさに驚くのと、快感に貪欲で、俺を求めてくる美樹に驚いた。どこでこんな体勢を覚えたんだろうか。清水か、それとも本能なのか。
後背位でするようになると、正常位でも段々とさらに大胆になっていった。挿入されると膝を折り曲げて大きく脚を拡げて、声が大きくなってきた。 その迫力に負けそうになる。快感の虜、性欲の虜。
このころはもう、避妊はたまにしかしていなかった。美樹はいつも中に出してほしいようで、「うれしィ!」のセックスのあとでは、中でフィニッシュするのが二人の約束のようになっていた。とはいえ、妊娠させるわけにはいかない。コンドームは使わなくても基本は膣外射精である。
二人で部屋にいて、話していて、そういう雰囲気になれば当然、ならなくても、この部屋に二人でいればすることは決まっていて、しないで帰ることはまずない。俺もしたいが、美樹もしたい。セックスするのは当たり前だった。
いつだったか、無言で服を脱がし始め、無言のまま挿入し、無言のままフィニッシュを迎えたことがあった。コンドームをつけていないペニスを挿入されて何も言わないということは、美樹としては「このまま中に出していいの」という意思表示だったのだろう。 でも、妊娠にビビった俺は、一言も喋らないまま、美樹の喘ぎ声を聞きながらも、いきそうになったら何もいわずに抜いてお腹の上に射精した。 精液をふきながら美樹は「・・・中に出してもよかったのに・・・」と一言。今思えば、俺も一言「出していい?」と言えばよかった。
美樹が千駄ヶ谷に越してから、お互いにセックスに少し慣れてきたように感じる。再びのアパート暮らしで、長い時間ゆっくりはなせるようになったからかもしれない。
この頃に、笑いながらセックスすることもあったな。心に余裕が出てきたのか。
それまでにもしたことがあったはずだが、騎乗位を何回か試した。美樹は慣れておらず、動き方もわからなかったのが、ある時に前後に動いて快感を覚えたらしい。 シックスナインをしたのもこの頃だ。美樹はペニスをしゃぶり、俺は美樹のワギナに舌を突っ込む。感じたのか、ペニスをしゃぶるのがおろそかになって喘いでいた。
本当はもっとフェラチオしてもらえばよかったのだが、風呂付きアパートに住んだことがないので、セックス前に風呂に入る習慣がなかった。
スメグマ(恥垢)まみれのペニスを美樹に舐めさせるのは気が引けた。でも、交際終盤ではティッシュで拭き取ったペニスを美樹の前に差し出してくわえさせるようになった。美樹は喜んで口に含み、喉の方ばかりか、歯の外側に当てて、「尺八」したりしていた。 ずいぶんと慣れてきたのかな。
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