自分だけの思いつき、など。

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...... 2020年11月15日 の日記 ......
■ A君の話   [ NO. 2020111501-1 ]
彼は音楽が好きである。その昔、山下達郎のコンサートに誘ってくれた。
「権之助君、山下達郎のコンサートに行かないかい?」
「行く行く、行きます」
「そうか、じゃあ、名古屋だから準備してくれ」
「え?」
いや、それでも喜んで行きましたよ。
母に、「今週末(だったかな)、誘ってくれる人がいて、山下達郎のコンサートに行くので、名古屋まで二泊三日で行ってくる」と行ったら、友達が少なくて(いなくて)休日も一日中部屋でパソコンいじっている息子の行く末を案じていた母は珍しく喜ぶ顔をした。

時は流れて。

その後も山下達郎のコンサートツアーの度に名古屋行きは続いた。名古屋だけではない。大阪も広島も行った。関東は、なかなか当たらないが、当たったら当然行った。群馬栃木なんてのは遠征の内に入らない。ファンクラブに入っている彼は、会場に行くと何人もの知り合いに会う。みな遠征してきているのだ。

コンサートに誘ってくれるのは嬉しい。なにしろ山下達郎だ。プラチナチケットだ。
しかし、鈍臭い私以上に彼は鈍臭い。行動がとろい。何回も名古屋までクルマで行ったが、段々迎えの約束時刻から遅れるようになる。
11時、といっていたのに一向に来ない。連絡もない。20分位過ぎてから別に謝るでもなく「権之助君、30分くらい遅れる」とか電話してくる。
何回目かのときには、どうかするとコンサートそのものに間に合わないのではないか、と思うくらい遅れたことがあった。ホテルへのチェックインは後回しにして会場直行。
またこのコンサートに行くにも、余分に入手した券を買う人とやりとりするので何時にどこで、という約束をしているのに遅れていて、取引の相手から何回も催促のメールだか電話だかが入り、それを私が応対させられる、というようなこともあった。

そしてクルマの運転も下手だ。下手な私が言うのだから間違いない。アルファロメオなんかに乗っているくせに、下手くそである。私の家の近所まで迎えに来てくれたことがあったが、道に迷って別の道を行き、戻ってくるときに角でこすっていた。
名古屋では、右折車線に入ったのに直進してクラクションを鳴らされる。信号待ちで止まるときには前に2台くらい入るくらい車間を取る。
よくいえば安全運転。

そもそも東京在住のこの人がわざわざ名古屋まで行くのは、山下達郎のコンサートチケットはプラチナ化しており、東京ではなかなか取れないというのが理由であるが、この人、「タツローマニア」で、栃木群馬千葉神奈川の関東近郊は言うに及ばず、大阪広島北海道福岡神戸、と申し込んで取れたチケットは全て行く、という人でもある。

職業は何か、とお思いの方もおられるであろう。
職業は、無職。
リーマンショック後の経営悪化での希望退職に応募して辞め、それ以来だから10年くらいずーっと無職。
本人曰く、辞める何年か前からうつ病を患って通院治療しており、それが治っていない、ということもあるようだが。いやそれにしたって。
なにも正社員にならずとも、週2,3日アルバイトしてみるとか、社会復帰のプログラム(あるかどうか知りませんが)などで就労してみるというのも考えられるのではないだろうか。
でも、この10年ほど、1日たりとも働いたことがない。そう、まるで「働いたら負けだと思っている」かのようだ。

祖父の始めた会社がそこそこ大きい医療品関係の会社だそうで、父親はその会社の偉い人だそうだが、本人はそこには入らず、好き勝手、でもないが、まぁ関係ない職業についた。ついて、そして辞めた、と。

時々、本当に時々、こちらから送ってメールに返事が来ることがある。毎回は来ない。
コンサートの話とか、生活の話なんかをするが、時々「金がない」とか「貯金を食いつぶした」とか書いている。しかし、10年間無職の人が山下達郎のコンサートツアーの度に名古屋大阪広島神戸福岡札幌などなど行けるものだろうか。

彼はfacebookをやっている。時々見ると、

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